JSAI2020 企画セッション
『専門家支援における知識の構築法~
パーソナライズの最適化を目指して』
2020/6/10 | 17:50〜19:30
概要
専門家を育成するためのマニュアルには、統一された視点で知識を記述するためのガイドラインが必要です。
今回、行為のための知識の記述について、産学で活躍されるパネラーをむかえたセッションを行います。
開催日
6/1 0
開催時間
17:50〜19:30
企画意図
企画意図
専門家を育成するための新人教育には、作業や手順をわかりやすく表記したマニュアルの整備は欠かせない。
また、起こりうる様々な事例の知識の整備も必須となる。
さらに、マニュアルや事例に示された形式知のみならず、専門家が暗黙的に行っている作業を可視化することも重要になる。作業者への知識の提供は状況が様々に変化することを前提としており、そのため
知識を記述する際には、場当たり的に行うと再利用性を下げる恐れがある。
オントロジーは知識記述者が知識を記述する際のガイドライン的役割を果たすものであり,再利用を指向した知識の蓄積と共有に役立つ。
そのように記述された知識は視点が統一されているため、計算機システムで扱う際にも利用しやすい。
今回、オントロジー工学に基づいて、介護等サービス業の行為の構造的記述と活用の研究に従事している産総研の西村悟史氏を招待し、
「目的指向の行為に関する知識の構造的記述」について、ご講演いただき、マニュアルや事例の記述方法について、議論したい。
企画者について
押山千秋
産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 特別研究員
人間の認知や行動は、心理学で一定の法則の下、表現されており、その知識も莫大である。
認知や行動のパーソナライズを最適化し、それを共有するときに、心理学の知識は活かされる。
しかしながら、心理学には、様々な視点があり、その表現方法が一定ではないこともある。
また、心理学以外の専門家との間には、用語の使い方の統一がなされていないという現状もある。
上記のことから、心理学の知識が現場や他の専門家にしっかりと活用されていないということも考えられる。
オントロジーは、特定のドメインのエンティティ、定義、および相互関係を指定する分類システムである。
オントロジーにより、心理学分野に関する知識を高め、共通理解へ導き、領域や視点の違いを超えた専門家同士の連携が可能になると考えられる。
今回、西村悟史氏を招待し、西村氏の研究を通して、オントロジーについての理解を深め、知識の有効な利用について検討し、パーソナライズの最適化に有効な手法について、議論したい。
講演者
について
西村悟史氏
産業技術総合研究所 人間知能研究センター
研究員
「目的指向の行為に関する知識の構造的記述
~心理学への期待」
いわゆる「マニュアル」は手続き的知識が記述された表現物であるが,その記述方法に一貫性がない場合,
記述する際には,複数人での協調的な記述作業に支障が生じ,
読む際には,読み手によって異なる受け取り方をする可能性があり,
計算機で処理をすることを考えた場合にも,利用がしにくい.
本講演では,目的指向の観点から行為をどのように捉えると,一貫性を持って記述できるのかを示し,介護分野でのマニュアル記述への適用例を紹介する.
それを受けて,企画者の西野氏に対して,「マニュアル」を扱ってきた企業者の立場から,『「マニュアル」とは何であり,何でないか』
について率直なご意見を期待する.
加えて,行為とは人の内的状態から生起するものという認識もできるが,それを適切に記述し,計算機上で扱うためには,心理学の観点が肝要と思われる.
そこで,企画者である押山氏に対しては,
心理学分野におけるオントロジーの展望について伺いたい.
西村拓一氏
産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 上級主任研究員
対価を受けて行うサービスや製造などの作業だけでなく、無料の活動においても、その価値を高めるために研ぎ澄まされた
作業手順とそれを実現するスキルが存在します。
それらの構築には、対人の場合はターゲット顧客の嗜好や
満足度を上げる法則、対物の場合は物理現象や機構に関する
知識をフル活用しています。
マニュアルは、できるだけ提供者の能力に左右されずに、一定の価値を担保することが目的となります。
しかし、私たちが模索している目的指向の構造化は、提供者
個々人のオリジナルな能力を開花させ、提供者が顧客それぞれが最も満足する作業をカスタマイズする能力を身につけるベースとなります。
特に、一人称の研究のように、各提供者の研ぎ澄まされた知識や考え方を構造化し、共有することで、他の提供者が自身に適した技術を発見する手助けにする点で、人間の認知行動能力を
拡張するものです。
本セッションでは、この究極のパーソナライズの最新の
研究動向を共有し、今後の世界を構想できたらと思います。
企画者について
西野貴志(YAMAGATA INTECH株式会社)
マニュアルは、映画や小説のように観たり読んだりされること自体を目的としておらず、それとは別の目的を達成するために作成されます。
またマニュアルの作成には、指示や説明対象についての知識のほかに、分かりやすく説明を行うための知識が必要になります。
このような特徴をふまえ「マニュアルとは何か」について議論させていただくことで、世の中でのマニュアルについての様々な誤解や混乱を解消し、目的に即したマニュアルを構築するために何が必要なのか考える機会となることを希望いたします。
YAMAGATA INTECHについて
取扱説明書、マニュアルを中心としたドキュメント
制作会社として1983年に発足。取扱説明書・マニュアル・
仕様書の制作、翻訳、CMSやXML/DITAドキュメント
システム開発事業を展開しています。
(https://www.yamagata-intech.jp/)
プログラム(予定)
Main image | Title | Description | Start |
---|---|---|---|
開始のあいさつおよびメンバー紹介 | 西村拓一氏 | 2020年6月10日 17時50分~18時00分 JST | |
企画意図について | 押山・西野より | 2020年6月10日 18時00分~18時20分 JST | |
招待講演 | 西村悟史氏「目的指向の行為に関する知識の構造的記述~心理学への期待」 | 2020年6月10日 18時20分~19時05分 JST | |
パネルディスカッション | 司会:西村拓一氏 | 2020年6月10日 19時05分~19時30分 JST |